
前回のあらすじ
彼氏がいるにもかかわらず、あんずはラファエルさんと体の関係を持ってしまう。

\ 私の友達もココで出会ってました✨/
第12話「戻れない朝、言えない気持ち」
scene 1
目が覚めた瞬間、
ここがどこなのか、わからなかった。
見慣れない天井。
少し遅れて、
昨日のことが、ゆっくりと浮かんでくる。
——ラファエルさん
その名前が頭に浮かんだ瞬間、
胸の奥が一気に冷えた。
(…何してるの、私)
体が、動かない。
思い出したくないのに、
次々に思い出してきた。
キスしたことも、
そのまま流されたことも、
全部、覚えている。
隣を見る。
ラファエルさんは
何もなかったみたいに、静かに眠っていた。
その寝顔が
やけに無防備で、
余計に現実感がなくなる。
でも——
私の中では
もう全部、現実だった。
宏さんの顔が浮かぶ。
その瞬間、
体が小さく震えた。
(私、最低だ…)
喉が、ぎゅっと締めつけられる。
思い出したくないのに
頭の中に浮かんでくる。
宏さんが優しく笑う顔。
何気ない会話。
私にとって、全部大切なものだったのに。
「…なんで」
小さく、声が漏れる。
答えなんて、わかってる。
——止めなかったのは、自分だ。
布団を、そっと抜け出す。
できるだけ音を立てないように
静かに服を着る。
鏡を見る。
少し腫れた目と
見慣れない自分の顔。
(…ほんとに何してんだろ)
鏡から目を逸らした。
財布からお金を取り出して
テーブルの上に置く。
一瞬だけ、手が止まる。
これで何かが帳消しになるわけじゃないのに。
でも——
何も置かずに出ていくことが
どうしてもできなかった。
振り返らない。
振り返ったら、
戻ってしまいそうで。
そのまま、部屋を出る。
外の空気は
やけに冷たかった。
でも胸の奥だけが、
ずっと重かった。

scene 2
玄関のドアを開けた瞬間、
現実に戻された気がした。
見慣れた部屋。
いつもと同じ空気。
なのに——
自分だけが、違ってしまったみたいだった。
そのとき、
インターホンが鳴る。
モニターに映ったのは
りんごちゃんだった。
「大丈夫?」
ドアを開けると
すごく心配そうな顔。
部屋に入って
ソファに並んで座る。
しばらく沈黙が続いて
「…見たよ」
りんごちゃんが、ぽつりと言った。
「キスしてるとこ」
胸が、ぎゅっと締めつけられる。
「うわー、やられてるなって思った」
気まずそうに笑いながら
「止めようかとも思ったけど、無理そうだったし」
何も言えない。
何も言い訳できない。
「あとさ」
りんごちゃんが続ける。
「荷物、取りに来てたよ」
「…知ってる」
「最初、渡そうか迷ったんだけど」
少し間を置いて、
「ほぼ強引に持っていかれた」
その言葉が
やけにリアルで、
胸の奥がざわついた。
「……私」
やっと、声が出る。
「宏さんと付き合ってるのに…」
言葉が、途切れる。
「なんで、こんなこと…」
わかってる。
お酒のせいじゃない。
「自分が、ほんとに無理……」
視界が、滲む。
りんごちゃんは何も言わなかった。
ただ、隣にいてくれた。
「私、帰るね」
りんごちゃんが立ち上がる。
「今日はゆっくり休みなね」
その一言だけ残して
部屋を出ていった。
ドアが閉まる。
部屋が、一気に静かになる。

scene 3
一人になる。
静かすぎて
息が詰まりそうだった。
そのとき——
スマホが震えた。
画面を見る。
宏さん
一瞬で、呼吸が止まる。
(出なきゃ)
そう思うのに、
指が、動かない。
画面をただ見つめる。
コール音が部屋に響く。
でも——
出ることが…できない。
怖い。
何を言えばいいのか
わからない。
通話が切れる。
静寂が戻る。
そのまま、スマホを握ったまま、
私は動けなかった。
(……言えない)
何もなかったふりなんて、できない。
でも…
本当のことを言いたくない。
この気持ちを、言葉にしたくない。
言葉にしてしまったら
全部、現実になってしまう気がして。
なかったことには、もうできないのに。
それでもどこかで
まだこの現実から目を逸らしたい、
そう思っている自分がいて——
そんな自分が、いちばん嫌だった。

あとがき
あんず第12話をご覧いただきありがとうございます!
この時、頭の中に
優しく笑う宏さんの顔が次々と思い出されて
本当辛かった
まあ、自業自得なのですが


\ よく当たる性格分析がポイント?/











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