
前回のあらすじ
参加した2次会でラファエルから一緒に踊ろうと誘われたあんずは隙をつかれてキスされてしまう。

\ 私の友達もココで出会ってました✨/
第11話「揺れる夜、越えてしまった一線」
scene 1
音楽に合わせて
体がゆっくり揺れる。
さっきよりも
少しだけ距離が近い。
ラファエルさんの手が
私の動きに合わせて自然にリードする。
(……なんか、変な感じ)
足元が少しふわふわする。
音も、光も、
どこか遠く感じる。
「大丈夫?」
耳元で低い声がした。
「え…あ、はい」
そう答えたつもりなのに
自分でも少し頼りない声だった。
「顔、赤いよ」
そう言って
頬に軽く触れられる。
びくっとする。
でも——
その手を、振り払えなかった。
「ちょっと休もうか」
ラファエルさんが
そのまま私の手を引く。
ダンスの流れのまま、
自然に。
「え…、あ……」
足が止まらない。
止めようと思えば、止められたはずなのに。
リズムに乗せられるように
そのままフロアの外へ出ていく。
音楽が、少しずつ遠くなる。
さっきまでいた場所が
別の世界みたいに感じる。
廊下に出ると
空気が少しひんやりしていた。
「ちょっと外、出よ」
ラファエルさんは
振り返りもせずにそう言った。
その手は
まだ私の手を離していない。
私は——
一瞬だけ、立ち止まりかけて。
でも結局
そのまま、ついていった。

scene 2
廊下に出た瞬間、
音楽が一気に遠くなった。
さっきまでの熱が
急に引いていくみたいに。
でも——
手だけは、まだ離れていない。
ラファエルさんはそのまま
迷いなくエレベーターのボタンを押した。
「ちょっと外の空気、吸った方がいい」
振り返りもせずに、そう言う。
「…はい」
うまく考えられないまま
ただ頷いていた。
扉が開く。
中に入ると
一気に静かになった。
——密室。
さっきまでの音も、人の気配も、
全部切り離されたみたいだった。
ドアが閉まる。
その音が、やけに大きく響く。
沈黙。
「…大丈夫?」
すぐ近くで、声がする。
顔を上げると、
近い。
さっきよりも、ずっと。
「…ちょっと、だけ」
そう言った瞬間だった。
ぐっと、腕を引かれる。
背中が、壁に当たる。
逃げ場が、なくなる。
「顔、真っ赤」
低い声で、そう言われる。
指先が、頬に触れる。
そのまま、少しだけなぞる。
(……ダメ)
そう思ったのに。
体が、動かない。
視線が、逸らせない。
距離が、さらに近づく。
——一瞬、迷ったような気がした。
でも次の瞬間、
そのまま、唇が重なった。
さっきよりも、深く。
息が、詰まる。
頭が真っ白になる。
押し返そうと思えば、できたはずなのに。
手は、動かなかった。
ただ、
そのまま受け入れていた。
エレベーターが、止まる。
小さな音がして
唇が、離れた。
何も言えない。
何も考えられない。
ラファエルさんは
少しだけ距離を取って、
でも、まだ私を見ていた。
「……行こう」
その声に
逆らうことはできなかった。

scene 3
エレベーターを降りると
外の空気が一気に流れ込んできた。
少しだけ、頭が冷える。
さっきのことが
現実に戻ってくるみたいに。
何も言えないまま
そのまま歩いていく。
ビルの裏側。
人の気配がほとんどない場所。
「ここ、ちょっと静かだから」
ラファエルさんはそう言って
ようやく足を止めた。
「大丈夫?」
振り返って
まっすぐにこちらを見る。
さっきのエレベーターの中とは違って
少しだけ距離がある。
それなのに——
さっきの温度が
まだ唇に残っている。
「…大丈夫、です」
自分でも、何が大丈夫なのか分からないまま
そう答えていた。
少しだけ沈黙が流れる。
「ちょっと待ってて」
ラファエルさんが
軽くポケットを叩きながら言う。
「荷物、持ってくるから」
「…あ、はい」
そう言って、
そのまま離れていく。
足音が遠ざかる。
一人になる。
——静かすぎる。
(……何してるんだろう、私)
さっきのキスが
頭の中で何度もよぎる。
(ダメでしょ……)
遅れて
その感情が追いかけてくる。
宏さんの顔が浮かぶ。
胸がぎゅっと痛む。
(帰ろうと思えば、帰れる)
今なら、まだ間に合う。
ここから離れて
何もなかったことにできる。
——そう思ったのに。
足が、動かない。
(……なんで)
自分でもわからない。
ただ、
(なんでこんな素敵な人が、
私なんかに……)
そんなことばかり、浮かんでくる。
さっきの距離。
あの視線。
あの温度。
全部が、現実じゃないみたいで。
(……夢みたい)
そう思ってしまった。
——その時点で、
私はもう
戻ることを、選んでいなかった。

scene 4
足音が、近づいてくる。
ゆっくりと。
振り返らなくても
誰かはわかっていた。
「…待っててくれたんだ」
ラファエルさんの声。
私は、何も言えなかった。
ただ、そこに座ったまま。
ラファエルさんが
私の前で足を止める。
少しだけ、距離がある。
でも——
その距離が、さっきより遠く感じた。
「帰る?」
静かに、そう聞かれる。
その一言で
全部、戻れる気がした。
ここで「帰る」と言えば、
何もなかったことにできる。
ちゃんと、元に戻れる。
——そう思ったのに。
言葉が、出てこない。
代わりに
ほんの少しだけ、首を横に振っていた。
自分でも、気づかないくらい小さく。
ラファエルさんは
それをちゃんと見ていた。
「…あんずさん」
それだけ言って
迷いなく、私の手を取る。
さっきよりも、ずっと自然に。
その手を、振りほどくことはできたはずなのに。
しなかった。
ただ、そのまま歩き出す。
夜の空気が、少しだけ冷たい。
頭は、少しだけ冷えているのに、
体の奥だけが、まだ熱い。
どこに向かっているのか
わかっていた。
それでも、
私は何も言わなかった。
——止めなかった。
その夜、私は
戻れる場所を、
自分で手放した。

あとがき
あんず第11話をご覧いただきありがとうございます!
この時、
もう本当にどうしようもないくらい
心を奪われてしまってて
ここまで持っていかれたの
生まれて初めてで
自分のことを制御できなかったんだよね
これを機に
いろんなものを失うけど…
まあ頑張れよ、過去の私




\ よく当たる性格分析がポイント?/











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