
前回のあらすじ
いつもあんずの傍にいるチョンホの姿がないことに対して、 不敵な笑みを浮かべるラファエルさん…何かが起こりそうな予感。

\ 私の友達もココで出会ってました✨/
第10話「戻れなくなる前の夜」
scene 1
2階に上がると
さっきまでとは全く違う空間が広がっていた。
薄暗い照明に
低く響く音楽。
人の笑い声と
グラスの触れ合う音が混ざり合って
まるで別の場所みたいだった。
簡易的なバーカウンターの前では、
何人かが楽しそうに踊っている。
「すご……」
思わず、声が漏れる。
そのまま
りんごちゃんと一緒に
端のソファに腰を下ろした。
「ねえ」
りんごちゃんが
グラスを揺らしながら言う。
「ここの人たち
頭いいだけかと思ってたけど
こんな弾けちゃうんだねー、意外」
視線の先には
ラファエルさんがいた。
音楽に合わせて
周りの人たちと笑いながら話している。
自然に輪の中心にいて
誰とでも距離が近い。
さっきとは、また違う顔。
「…ほんとだね」
私は、ぼんやりと答えた。
楽しいはずなのに——
どこか、ついていけていない自分がいる。
グラスに視線を落とす。
(チョンホだったら、
こういう場所、苦手そうだな…)
ふと、そんなことを思ってしまう。
「あんずさん、大丈夫…?」
りんごちゃんが
横から顔を覗き込んできた。
「全然楽しくなさそう…」
「え、そんなことないよ!」
慌てて笑ってみせる。
でも——
そのときだった。
「やっぱり、ここにいた」
低い声が
すぐ近くから聞こえた。
顔を上げると、
ラファエルさんが立っていた。

scene 2
「やっぱり、ここにいた」
低い声と同時に
ラファエルさんが私たちの前に立った。
「楽しんでる?」
そう言って
自然に隣に腰を下ろしてくる。
距離が、近い。
「え、あ、はい……」
少しだけ体が固まる。
「全然楽しんでなさそうだけど?」
ラファエルさんは
くすっと笑った。
そのまま視線を外して
りんごちゃんの方を見る。
「初めましてだよね?」
「はい!りんごです!」
りんごちゃんは
いつものテンションで答える。
「いいね、元気で」
そう言って軽く笑う。
その一言だけで、
場の空気が一気に和らいだ。
(すごい……)
誰とでも、すぐ距離を縮める。
そこにいた日本人男性が
少し遠慮がちに口を開いた。
「あの、さっき少し話してた…」
「ああ、そうだよね」
ラファエルさんは
すぐにその人の方に体を向ける。
「さっきの続き、なんだっけ?」
自然に会話の中心に入っていく。
誰も置いていかないのに
気づけば輪の真ん中にいる。
(こういう人なんだ……)
私は、少しだけぼんやりと眺めていた。
そのときだった。
「で、あんずさんは?」
突然、話を振られる。
「え?」
「こういうの、苦手?」
顔を覗き込まれる。
近い。
「いや……ちょっとだけ」
正直に答えると、
「だよね」
ラファエルさんは、
軽く笑った。
そして、ほんの一瞬、
私の方を見て
「無理しなくていいよ」
その声だけ、少し低い。
——ドキッとした。
横で、りんごちゃんが
こっそり私の腕をつつく。
(ちょっと…距離近くない?)
目だけでそう言ってくる。
私は小さく首を振る。
(いやいや…そんなこと……)
そのやり取りを見ていたのか、
ラファエルさんが
ふっと笑った。
「あんずさん」
グラスをテーブルに置いて
立ち上がる。
そのまま、私の前に手を差し出した。
「踊ろう」

scene 3
ラファエルさんの手を
一瞬だけ見つめる。
断ろうと思えば、断れたはずなのに。
——なぜか、私はその手を取っていた。
「行こう」
軽く引かれて
そのままフロアの中央へ連れていかれる。
音楽のボリュームが上がって
さっきよりも空気が近くなる。
人の熱と、光と、音。
全部が混ざって、
少しだけ現実感が薄れていく。
「こういうの、ほんと苦手そうだよね」
ラファエルさんが
少し楽しそうに言った。
「わかります?」
「わかる」
そう言って
私の手を軽く引き寄せる。
距離が、近づく。
ラファエルさんは
そのまま私の目を見て、
「顔に出るタイプだから、わかりやすい」
少しだけ笑った。
「えー、それ恥ずかしいな…」
思わず目を逸らす。
「大丈夫」
ラファエルさんの声が、
少しだけ近くなる。
「今はちゃんと楽しんでる顔してる」
その言葉に、
少しだけ息が詰まった。
気づけば、
自然に体を預けるような距離になっている。
こんなに近いのに
不思議と、離れようとは思わなかった。
(チョンホだったら……)
そこまで考えて
私は小さく首を振る。
今は——考えたくない。
そのときだった。
「ねえ」
ラファエルさんが
ふと真面目な声になる。
「彼氏いるの?」
一瞬、時間が止まったみたいだった。
音楽も、人の声も、
少し遠くなる。
「あ……います」
気づけば、そう答えていた。
ラファエルさんの表情が、
ほんの少しだけ変わる。
一瞬だけ。
でも、すぐにいつもの笑顔に戻って
「そのこと、チョンホ知ってるの?」
「え?はい、この間たまたま会って…」
ラファエルさんの顔が曇る。
——空気が、少し変わった。
ちょうどそのとき、
曲が終わる。
「あ、じゃあ私は席に…」
少し距離を取ろうとした、その瞬間。
「あ、あのー、次は僕と踊りませんか?」
さっき話していた日本人男性が、
遠慮がちに声をかけてきた。
「え……」
どうしようか迷った、そのとき——
「待って」
ラファエルさんが、
その間に入る。
「僕、この曲の途中からだったから」
軽く笑いながら、
「あんずさん、もう一曲いい?」
その言い方は
柔らかいのに、
どこか——譲る気がない。

scene 4
「もう一曲いい?」
その言葉に
私はほんの一瞬だけ迷った。
でも——
「…はい」
気づけば、そう答えていた。
ラファエルさんは
やさしく笑って
「よかった」
そう言って
もう一度私の手を取った。
さっきよりも、少しだけ強く。
そのとき
ちょうど照明が落ちた。
ざわめきが一瞬止まって
空気がゆっくりと変わる。
次に流れ始めたのは、
さっきまでとは全く違う
落ち着いた曲だった。
距離が、自然と近くなる。
手を引かれて
そのまま体が寄せられる。
気づけば、
ほとんど隙間のない距離で
向き合っていた。
何も言えない。
言葉が、出てこない。
ただ——
ラファエルさんの視線だけが、
まっすぐに向けられている。
(近い……)
逃げようと思えば
逃げられたはずなのに。
足が、動かない。
「…あんずさん」
名前を呼ばれる。
その声は、
さっきよりもずっと低くて、
少しだけ、やさしい。
顔を上げた、その瞬間だった。
——触れた。
ほんの一瞬。
でも、確かに。
唇が重なった。
時間が止まったみたいに
何も聞こえなくなる。
唇が離れたあとも
私は動けなかった。
ラファエルさんは
少しだけ距離を取って
何も言わずに
私を見ていた。
その視線から
目を逸らせない。
心臓の音だけが
やけに大きく響いていた。私はこの時
ここで止まれば、まだ戻れると思っていた。

あとがき
あんず第10話をご覧いただきありがとうございます!
この日のことは今でもよく覚えてる
私を誘ってきた日本人男性は
ラファエルさんの真剣な表情にびっくりしたのか
顔がひきつってた
今思えば、かわいそう…
でも、当時は私も何が何やらで
いっぱいいっぱいだったんです
だから、キスされたのも
きっと多くの人に目撃されたにもかかわらず
当の本人それどころじゃなかった
チョンホ〜〜〜
日本語の勉強してないでこっちに来てよー!泣




\ よく当たる性格分析がポイント?/











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